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 「先輩の後ろ姿に学ぶ」  
 学会誌:巻頭言  理事長 齋藤 益子
   
 「母と子を守る」その基盤を支えるのは、助産師といっても過言ではないでしょう。その理念の下に母子看護研究会を設立して10年が経過しました。この10年、母子看護の分野でも多くの出来事がありましたが、なんといっても平成20年の保健師助産師看護師法の改正は未来の助産師のあり方を示すもので、昭和23年以来60年の歴史を経て助産師保健師の教育課程を1年以上にするというものでした。

 このことにご尽力された南野知恵子先生は、今年の7月で18年3期の議員生活にピリオドをうたれました。先生は75歳になられたとのことですが、とてもお元気で、まだまだこれからと思わせるご様子でした。かつて先生と赤坂のホテルで夜景を見ながら母子保健について熱く語ったことが夢のようです。

 先生への感謝の会に出席して、強いリーダーシップと慈愛の心で看護界を導いて下さった先生が残された多くの業績や参集された看護界の重鎮たちの言葉にふれ、改めて看護を目指す先輩たちの偉大さをみた思いがしました。看護部長として看護協会や看護行政を支えた方々など、南野先生の様に生涯独身で、看護に自分の人生をかけて生きてきた人がなんと多かったことか。それほど看護の仕事は一生涯を掛けても悔いのない素晴らしい仕事なのだということを改めて感じさせられました。

 ふと考え込んでしまいました。「昨今の看護を目指す学生たちはこの看護の素晴らしさを感じているかしら? 自分の人生を掛けてもよいと思って看護の道を目指しているかしら? 教師はやりがいや生きがいとしての看護の素晴らしさ、またその様な熱いメッセージを伝えているかしら? 」と。 全て答えはNOと思えます。昨今、看護は将来に備えて資格を持つこととして選択されることが多いように思われます。最も自愛の心を必要とする看護は、やりがいや生きがいとして選択されてこそ価値あるものになるのです。助産師の仕事も、妊産婦との心の触れ合いを感じてこそ価値あるものになると思います。効率の良さや経済性のみではなく、本当の意味での社会に役立つ、弱者の視点を大切にした母子看護を推進していくことの大切さと責任を看護一筋に生きてきた先輩達の後姿に学んだ思いでした。
Masaccio (1401-1428)
Madonna with Child and Angels
(1426)
聖母子

マザッチョの作品のひとつで、聖母マリアはずんぐりとしていて、彫刻的な威厳を持っている重みのある作品です。指しゃぶりをしているキリストの可愛らしさと音楽を奏でている天使もふくよかでとても美しく描かれています。


   日本母子看護学会
理事長 齋藤 益子
 
エッセイ No.1 「しなやかな心と生きる力」
   
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