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 「急がれる思春期からの虐待予防対策」  
   理事長 齋藤 益子
   
 今日もまた、「赤ちゃんが死んだ」という悲しい出来事がありました。親が子どもを溺死させたニュースです。

 平成21年度の統計によると虐待の相談は年間4万件を超え、死亡した子ども67人、そのうち1か月未満26人、出生当日の死亡は16人でした。この背景には、望まない妊娠31.3%,妊婦健診未受診31.3%,母子手帳未発行29.9%で、支援が届かないところで起きています。

 虐待される児の多くは、出産後放置され、死に至っており、母親が胎盤をお腹に残したまま入院してきたので、急いで児を探したところ既に自宅のトイレで冷たくなっていた事例はまだ耳に新しい出来事です。これらの児は産声をあげる前に、ある者は置き去りにされ、ある者はゴミの様に捨てられています。文化的な先進国を誇る日本でこのようなことがあっていいのでしょうか。

 これらの虐待する母親は、未成年者が多く社会的・経済的に自立していない、いわば子どもが子どもを産んでいるともいえます。思春期の子どもたちは性的関心が高まり、性交を経験することに強い関心と期待を持っています。携帯電話やインターネットから容易にパートナーと知り合い、その日のうちに性交に至る事例も少なくありません。しかし、避妊の知識は不確実で希望しない妊娠に至ってしまいます。筆者が経験した17歳の母親は、救急車でいきなり飛び込んできて、出産しましたが、児に対する愛着は全くなく、触れることもしないまま退院し、児は児童施設に送られました。

 そういう意味で子ども虐待は正に思春期保健の大きな問題と言えるでしょう。思春期の子どもの性的自立を支援すること、すなわち性交に伴う諸問題について理解させ、性交時に確実な避妊行動がとれる様に支援することで、望まない妊娠を防ぎ、虐待される子どもは確実に減少させることが出来ます。

 熊本で赤ちゃんポスト、「コウノトリのゆりかご」が、話題になりました。思春期教育と併せて、子どもを育てることが出来ない女性が出産した際には、子どもを社会の子どもとして育てるシステム、新しい命が健やかに育つための社会資源の整備が急がれます。それは民間団体の努力に委ねるのではなく、国や自治体などの公的支援として制度化される必要があります。思春期保健を担う専門職として虐待予備軍への対応と出産前後の虐待ハイリスクへの支援について積極的に関わっていきたいものです。
Fra Filippo Lippi ( 1406-69)
聖母子







   日本母子看護学会
理事長 齋藤 益子
 
エッセイ No.1 「しなやかな心と生きる力」
   
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